2019/08/30(金)球団CSR

第29回世界少年野球大会が開催されました

29回目を迎えた「WCBF・世界少年野球大会」が7月30日~8月7日の期間で、福島県福島市にて開催されました。

この「世界少年野球大会」は「野球を正しく全世界に普及、発展させると同時に、世界の青少年に友情と親善の輪を広げよう」と、王貞治球団会長が“私の友人”と言うハンク・アーロンさん(米大リーグ通算755本塁打の伝説の強打者)と共に提唱。日米のホームランキングが手を取り合ったことをきっかけに誕生しました。
1990年、ロサンゼルスでの第1回大会に始まり、そしてこの大会を契機に設立されたのがWCBF(世界少年野球推進財団)です。王会長は同財団の理事長を務めています。
今年の舞台となったのは福島市でした。今大会には世界14の国と地域から野球教室には120名の少年少女が参加し、また、中華台北のチームが地元福島県の6チームと国際交流試合を行いました。ラオス人民民主共和国が初参加、アルゼンチンが21年ぶり、ガーナが20年ぶりとまさに世界各地の子どもたちが集結。子どもたちは8泊9日のあいだ寝食を共にし、午前中はグラウンドで野球教室、午後は交流行事などを行いました。

また、WCBFの活動には福岡ソフトバンクホークス株式会社ならびに、ソフトバンクグループ株式会社を含む19社が協賛しており、世界少年野球大会に参加する子どもたちの渡航費や用具、練習着などはすべてWCBFが負担しています。
野球教室では投げる、打つ、走るといった基本メニューからスタート。毎回野球経験のない子どもたちも多く参加していますが、驚きのスピードでみんな上達していきます。そして、とにかくみんなの笑顔、元気な声が、この世界少年野球大会の特徴です。コーチの大人たちも一緒に楽しみ、一緒に声を上げる。各国たくさんの言葉が飛び交いますが、1つのボールを追いかけていると皆が自然と一つになり、仲良くなっていくのです。また、大会ヘッドコーチを務めているのは内川聖一選手のおじの内川義久コーチです。

一般的な日本式の教育システムに倣うと、学びと遊びの間には線を引きたがる傾向があります。しかし、世界少年野球大会では学びと遊びが上手く共存できているというのが、強く印象に残りました。
そして、福島の会場で王会長にインタビュー。この世界少年野球大会についてたっぷりと語っていただきました。


――29回目迎えた「世界少年野球大会」を設立された思いを改めてお聞かせください。
「アメリカのハンク・アーロンさんと会って話している中で、自分たちが楽しく、いい思いもさせてもらった野球を、若い世代の人たちにもやってもらいたいと思ったのです。その中からプロ野球選手になる子が出てくれればそれも嬉しいですが、そこが目的ではありません。体を鍛えて、友達をたくさん作って、ルールを守るということを覚えてほしいですよね。団体スポーツである野球の利点は『ルールを守る』ということを自然に身につけられる点だと思っています」

――世界各地から子どもたちが集って交流できるというのは、すごく貴重な体験ですよね。
「今の時代は、国際交流というのは必須ですよね。この大会をスタートした頃は特に子どもたちの年代ではまだ頻繁ではありませんでした。私が一番印象に残っているのは、アメリカとロシア、まだ当時はソ連だったと思いますが、その頃に参加した女の子同士が座ってお弁当を食べているシーンを見たんです。どんな言葉で意思の疎通をしているのかなと思っていましたが、子どもというのは不思議なものでちょっとずつ距離が近づくんですよね。子どもの世界は大人が考えるよりも子ども同士でちゃんとコミュニケーションをとれるんです。今大会で29回目を迎えましたが、毎回思うのが子どもたちの表情の変化、目の輝き、上手く出来た時の嬉しそうな顔が我々も嬉しいんです。そして子どもたちが日々仲良くなり抱き合っている姿なんかを見ると、大変な事業ですけど続けていかないとと思いますね」

――野球を通じた子どもたちの健全育成が、世界のボーダレス化や世界平和にも繋がっていくのですね。
「世界中で難しい問題も抱えていますが、少なくとも小さな頃にこのような国際的なふれあいがあれば、相互理解をしやすくなりますよね。世界にはそれだけの国や地域があって、それぞれ成り立ちも文化も違うものがあるということを、こうやってふれあうことで分かるんです。今は上手く協調が出来ていない国同士もありますが、この大会のような経験をした子どもたちが将来大人になった時に、相手の立場を理解し合いながら物事を考えられるようになってくれればいいなと思うのです」

――また、野球発展への思いもあると思います。王会長の考える野球の魅力とは?
「野球って体力だけじゃない。頭脳プレーもあるわけですよ。だから子どもたちが大人になって普通に生活をするなかでも、野球をやった経験というのは大きいと思います。当然友達もたくさん出来るし、体も鍛えられる。野球って体力任せのスポーツではありませんから。体力の有無、体格の違いがそれぞれでも、その人なりのやり方があります。それが野球の良さなんですよ。それと同時に、野球をやれば誰でもバッターボックスに立てるわけで、その時はヒーローになれるんです。他のスポーツにはない野球の良さをもっともっと皆さんに知ってほしいですね」

――また、この世界少年野球大会を通じて感じたことがあります。王会長は野球人生において血の滲む努力や忍耐の積み重ねの末に“結果”を積み重ねてこられました。野球に対して厳しいというイメージでした。しかし、世界少年野球大会の王会長は真逆でした。常に笑顔。野球を楽しむということを子どもたちに伝えていますね。
「この中からプロ野球選手とか甲子園球児が出てくれればそれは嬉しいけど、そのためにやっているわけじゃない。とにかく野球を楽しむ、友達を作る、ルールを守る習慣が自然に身につく。それだけで十分だと思うんです。また、今回は福島での開催です。その土地の伝統文化や歴史に触れることで『あ、こんな世界もあるんだ』と知ってくれればいいんです」

――今回、福島で大会を行うことが出来た意義はどのようにお考えですか?
「来年の東京五輪では、野球とソフトボールの開幕戦がこの福島県で行われます。スポーツへの思いが非常に高まっています。また、この大会を行うことで海外の子どもたちが福島を実際に訪れました。東日本大震災の風評被害がまだ残っていると聞きます。その中で、世界各地の子どもたちが元気に野球をしたり活動をしたりするのが広く伝われば、福島はもう大丈夫なんだと多くの人々に知ってもらえるのではないかと期待しています」

――子どもたちへのメッセージをお願いします。
「大会後には毎回お手紙をいただくのですが、お父さんお母さんから子どもがすごく積極的に動くようになったと書かれていたりします。子どもたちは、今までは自分の世界だけで生きてきた中で、全く違う世界に飛び込んだわけです。それでも楽しくやれることが分かった。外国の人とも話をして、意思の疎通が出来るんだと分かった。今まで気づかなかったもう一人の自分に気づくのだと思います。自信も持てますよね。これから先の人生という歩みの中で積極的にチャレンジする心が加わる。ここで感じたこと、学んだことを継続するという思いを持って毎日を過ごしてほしいですね」

2019年8月30日掲載
田尻 耕太郎(スポーツライター)

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